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ハードウェア設計方針

本ゼミの模擬衛星ハードウェアは、受講生が実装・統合・デバッグを通じて問題解決の考え方を身につけることを主目的として設計しています。部品の詳細な仕様や基板設計については ハードウェア資料 を参照してください。


ミッション基本設計

テレメトリデータを受信・表示するだけのシステムでは、ミッションとして達成感が薄い。そこで以下のミッションを設定します。

ミッション構成

  1. 太陽センサ:フォトダイオードを複数方位に配置し、基準となる太陽模擬ライトに対する姿勢を推定

  2. リアクションホイール:推定した姿勢をもとに衛星を目標方向へ向くように姿勢を制御

  3. ミッションカメラ:太陽との相対位置が既知の天体模型を撮影し、画像をダウンリンク

設計の簡略化方針

  • カメラはスタートラッカー(STT)として用いず、純粋なダウンリンク用途のみとする

  • 姿勢制御は3次元ではなく1自由度(平面回転のみ)に限定し、制御設計の複雑さを減らす

  • 技術的な難易度を抑えつつ、「センサで測って、制御して、撮影・送信する」という一連の流れを体験できる規模を維持する

このミッション構成であれば、衛星開発ゼミを名乗るのに十分な内容になると考えています。


インターフェース設計とデバッグ体験の設計

受講生が各通信インターフェースの実装上の難しさを実際に体験できるよう、意図的に異なる種類のインターフェースを組み込んでいます。

UART:カメラで苦しむ

カメラからの画像データ取得を UART で行うことで、ボーレート設定、タイミング、大容量データのバッファリングといった問題に直面させます。

I2C:電気的な難しさ

I2C の電気的な問題(プルアップ抵抗、バスキャパシタンス、アドレス競合など)をどこかのデバイスで体験させたいと考えています。具体的な対象デバイスは設計段階で選定します。

温度センサを搭載しない理由

温度管理(熱設計)を実施しない代わりに、I2C デバイスの選択肢として以下を検討しています:

  • ジャイロスコープ(ICM-42688)

  • ADC(MCP3008)

  • EEPROM

  • RTC

同一のインターフェース(I2C)でも、デバイスごとにアドレス設定やレジスタマップが異なるため、データシートを読んで実装する経験を積ませることができます。

基板スタック+マイコン間 UART 通信

同じ形状の基板を複数枚スタック(積層)し、機能ブロックを分けて搭載します。各基板上のマイコンは UART で相互通信します。単一マイコンではなく、複数マイコン間のプロトコル設計・通信デバッグという、より実践的な課題に取り組ませることが目的です。


電源設計

要求

  • NiH(ニッケル水素)充電池とアルカリ乾電池の両方に対応

    • ゼミ中は使い捨てを避けるため NiH を使用

    • 参加者が持ち帰りアルカリ電池を挿して使用できることも保証する

電池種別

セル電圧範囲

NiH(ニッケル水素)

1.1 〜 1.4 V

アルカリ

0.9 〜 1.6 V

電圧要求

デバイス

必要電圧

サーボモータ

4.8 〜 6.0 V(目安)

Raspberry Pi Pico W

1.8 〜 5.5 V(厳格)

カメラモジュール

3.3 V(厳格)

解決策

単セルから昇圧でサーボに供給するのは困難なため、単4電池 4 本直列(4.4 〜 6.4 V) を基本電源とします。

電池4本 (4.4〜6.4 V)
  ├─→ サーボモータ(直接供給)
  └─→ 低ドロップアウト 5 V リニアレギュレータ
          ├─→ Pico W VSYS(データシート準拠のショットキーバリアダイオード経由)
          └─→ Pico W 内蔵 DCDC → 3.3 V → カメラ・センサ等
  • 入力電圧が 5 V を下回っても、ドロップアウト電圧分だけ降下するだけで動作は継続します

  • Pico W のデータシートに従い、VSYS 入力にはショットキーバリアダイオードを挿入します

電池寿命の試算

デバイス

消費電流(目安)

サーボモータ(ストール時)

120 mA

カメラ + Pico W

70 mA(安定化電源による実測)

アルカリ単4 4本(容量約 2000〜3000 mAh / セル)で、代表的な動作条件では 1〜2 時間程度 の連続動作を見込んでいます。充電のダウンタイムを避けるため、ゼミ本番では基本的にアルカリ電池で運用します。


カメラ選定

理想要件と現実のギャップ

理想的には以下の条件を満たすカメラモジュールが欲しいところです:

  • シリアル出力インターフェース(I2C / SPI / UART 等)

  • 技適認証済み(日本国内での使用)

  • EOL(End of Life)でない

  • 十分なドキュメント

  • 価格が 1000 円程度

しかし、このすべてを満たす市販品は存在しません。

OV7675 パラレルカメラの採用

上記の理由から、OV7675(8bit パラレル出力 + I2C 制御 + PCLK/VSYNC/HSYNC)を採用します。

  • パラレル出力は GPIO を大量に使用するため、基板・配線設計の難しさが増します

  • UART の代わりに、パラレルバスのタイミング設計やデータキャプチャといった課題が発生します

  • UART による苦しみはカメラで経験させつつ、実装の達成感も得られる構成です

Pico W は 250 MHz にオーバークロックして使用し、PIO は Servo.h と競合するため現状は使用しません。


姿勢制御アクチュエータ

リアクションホイール(RW)を基本とし、実装が困難な場合はサーボモータで代替できるようにします。

  • リアクションホイール:フォトリフレクタを取り付けてロータリエンコーダとして使用し、回転速度・角度のフィードバック制御を実装

  • サーボモータ(代替案):SG90 等のマイクロサーボ。RW の実装が間に合わない場合や、デバッグ体験に集中させたい場合に切り替える

この判断をゼミ運営・参加者の状況に応じて柔軟に行うことで、ミッション要件とシステム複雑さのトレードオフを実感させます。